皆さんこんにちは、billです。今回は随分前からレビューを書いておきたいと思っていたペダルのレビューを書きます。
(左上がvolume、右上がgain、左下がbass、右下がtreble、筐体の上部にsaturation trimmer)
説明不要の現代名機、VemuramのJan Rayです。
本当に完成されたオーバードライブだと思います。クリーン〜クランチ、オーバードライブ辺りのゲイン量においていえば「正解」の1つと言えます。
よくこのペダルに関する触れ込みとして、所謂トランスペアレント系とかブラックフェイス期のフェンダーアンプの音を再現する、みたいに書かれている事が多いと思いますが、正直言って、そんな売り文句はどうでもよくなるくらいの説得力がこのペダルにはあると思います。
これから少しレビューを書いておきますが、このペダルは是非一度楽器店さんなどに行って実際に弾いてみて欲しいなぁと思っています。
今回のレビューのポイントは2つ。
1.とにかく音のバランス感覚が圧倒的
2.シンプルな操作性とキャラクターの幅広さの両立が素晴らしい
1:まず1つ目についてですが、とにかくこのペダルはこのバランスの良さに尽きると思っています。
で、このバランスの良さは、そもそもの音のチューニングが卓越しているという点に起因していると思います。
というのも、Jan Rayは音のレンジ自体はそれこそチューブスクリーマー等の古典的なオーバードライブと比べれば、相当広がっている訳ですが、これは実際に鳴らしてみて感じて欲しいのですが、物凄く中域を大切にしている事が感じられます。
特に、ギターのトーンの抜けや煌びやかさに関わるハイミッドと、音の腰や心地よいコンプ感に関わるローミッドがしっかりしています。つまり、ギターのトーンにおいて本当に出て欲しいミドルの美味しい部分がしっかり前に出て、逆に不要なローや耳障りなハイは鳴りを潜めます。
従って、音の「安心感」、とでもいいましょうか。スタジオの常設のJC120にクリーン〜クランチ程度でかけっぱなしにするだけでも理想的なトーンがアンプから出てきますし、単体で歪ませてもいいでしょうし、真空管アンプのブースターとしても文句なしに機能します。つまり、所謂オーバードライブに求められるであろう使い方において言えば、どんな使い方をしてもいい音がするという物凄いバランス感覚を達成している訳です。
素晴らしいの一言。
少し脱線しますが、個人的に思うのは、ギターにおけるミドルの処理に関して言えば、もはやエフェクターは既にアンプを超えてるんじゃないかと思うのです。
そもそもチューブスクリーマーしかり、オーバードライブというジャンル自体が「ギターのトーンの核である中域」という存在と切っても切り離せないものであり、元々はそこにフォーカスを当てた機材である訳ですから、時代が進むにつれて回路の細かい部分まで研究が進み、いつしか「ギターの音作りの核」となっても決して不思議ではないんですよね。
そして2018年現在、ギターを弾く人でオーバードライブを使わない人の方が珍しい、なんて過ぎた事も堂々と言えるほど、ギタリストの音作りの核に現になっていると思う訳です。エフェクター好きとしては何だか感慨深くなってしまいますね。
(シックな真鍮製の筐体は美しさだけでなくノイズの少なさやその独特なトーンの雰囲気にも一役かっています。)
2:で、2つ目についてですが、これまたJan Rayの凄いところで、元々の音のチューニングの良さに加え、コントロール類の効きが良いのもポイント。ベース、トレブル、そしてサチュレーショントリマーの3つだけで、その人それぞれの使い方に合わせて最適なトーンを作れると思います。例として、ゲインを高めに設定する、又は真空管アンプや他のペダルのブースターとして使う場合はトリマーとベースは下げ目で、トレブルはお好みで。プリアンプやクリーンブースターなどゲイン低めに使う場合は、トリマーは上げ目、2EQはお好みで。といった感じに調節すれば大体良い音が出ると思います。
あと、ボリュームもかなり稼げるのでブースターとして相当良い働きをします。ゲイン量もそこそこにあるので単体で歪ませる際にも、オーバードライブとしてであれば十分以上の音が出ると思います。
ということで、VemuramのJan Rayのレビューでした。
このJan Ray、生産台数でいうと確か約6000台(2018年12月現在)ほどに達すると思いますが、所謂ブティックなエフェクターでここまで世界的に人気を得るというのは正直前代未聞だと思います(ヴィンテージとして価格が高騰しているペダルは除いて)。
で、その理由はやはり、価格に対する期待を裏切らない素晴らしい音他ならないでしょう。流石だと思います。僕自身、購入してから約2年程経ちますが、今でも宅録等でクリーンからクランチのプリアンプとして本当に重宝しています。
回路において、音に関して重要な部分には自社製のパーツを用いたり、使用において消耗の激しいフットスイッチの接点には金メッキを施して劣化を防ぐなど、細部までしっかりと作り込まれているこのペダル。クリーン〜クランチ程度のローゲインなペダルで長く使えるものを探している、なんて方は是非一度お試しあれ。
「2010年代における日本、ひいては世界をまたにかけた現代のエフェクター界を代表するブティックペダルの1つ」の名にふさわしいペダルだと思います。