森の秘密基地

音楽に関することをだらだらと綴っています。

29 Pedals EUNA レビュー

皆さんこんにちは、Billです。

おいこれマジで良いぞ…。。。。

f:id:ubilliquitous:20210331165701j:image

(コントロール類は左からHarmonics,Brightness,Low)

29 PedalsのEUNAです。

アメリカはロサンゼルスに居を構える新興エフェクターブランドである29 Pedals。その29 Pedalsの現在のフラグシップとも言える新世代のバッファ・プリアンプペダル、それこそがこのEUNA(Elite UNity Amplifier)です。

元々はInstagramを中心に2020年の発売当初から注目され始め、その後YouTube上にもちらほらとデモビデオが上がってきたこともあり海外では既に結構な話題になっていたこのEUNA。僕自身去年辺りからずっと気になっていたペダルではあったものの、「まあそもそも今大人気なペダルで在庫全然ないし、特に今コロナ禍だから個人で輸入するのもなんかあれだなぁ…。」といった感じでずっと逡巡していました笑。

ところが2021年の3月末、アンブレラカンパニーさんが日本国内の輸入代理店となった事で晴れてEUNAが日本でも正規ルートで購入出来るようになり、速攻で購入したという訳でございます。

f:id:ubilliquitous:20210331153113j:image

(中身パカァ。見ると分かると思いますが、実は基板面に色々な文面が印刷されています。どうやらこれらがEUNAをモディファイする際のTIPSになっているとのこと(改造すると保証対象外になってしまうのでくれぐれもご注意を)。また、これは実際に基板をよく見ると分かるのですが信号部分を通る泊銅がとても厚いです…。これは良い音しそうな予感満点です…。)

 

という事で、早速レビューに入りましょう。

今回のポイントは3つ

①まずバッファとしての基本性能が凄い

②EQスイッチが非常に秀逸

③電源も含めたトータルのビルドクオリティが高い

 

①まずここが一番気になる所だと思うのですが、個人的に、今まで試してきたペダルの中でもダントツで出音のバランスの良いバッファペダルです。

まずこのEUNA、従来のバッファペダルからは考えられない程に再生レンジが広大な上にヘッドルームにも非常に余裕があります。そのためバッファでたまにある、低域がすっこ抜ける、カッティング等でアタック・トランジェントが頭打ちになる、複雑な和音を鳴らした際に音が濁る、といった事が全く無いのです。

これ本当どうやってるんですかね…笑笑???特に和音でカッティングした際のジュワッとした質感や分離感がそのまま前に出てくれるのは個人的にめちゃくちゃ嬉しかったです…。。しかも低域も余裕を持って鳴ってくれるので弾いていて安心感があります。

この感じ、所謂ペダル型エフェクターのバッファというよりレコーディングスタジオで用いる録音用マイクプリアンプのそれに近いものを感じました。まさに、バッファとしてハイレベルな基本性能を有しているからこそ達成出来るトーンだと感じました。

f:id:ubilliquitous:20210407092041j:image

(空間系でダントツのお気に入りのFlintと。この2台にあと一個足してお出かけ用ボード組んでも良いかも…??)

②バッファとして抜群の性能を有しているEUNA。唯一のコントロール類とも言える3つのEQスイッチもまた非常に秀逸です。

一番左の「Harmonics」は主に空気感に関わる超高域を棚型で数dBブーストするシェルブEQスイッチ。このスイッチに関しては、良く調整されてプレゼンス成分が自然と良く出てくれる真空管アンプを鳴らす際にはオンにする必要はないかもしれません。ですが、宅録等でアンプシミュレーターを用いる場合や、スタジオ等でへたったアンプを鳴らす場合に絶大な威力を発揮します。DAW側やアンプ側で足すよりも的確に欲しい帯域を前に出してくれます。これは是非試して欲しいと思います。

真ん中の「Brightness」は具体的な音抜けに関わるハイミッドをブーストするEQスイッチ。このスイッチが非常に秀逸で、アンプのトレブルやギター側のトーンよりもピンポイントな帯域をブーストしてくれます。その為、例えば普段は高域が出過ぎないように調節しているけれど曲や環境によって少しハイ抜けが欲しい、という時にこのスイッチをオンにするだけで音を前に押し出してくれます。

一番右の「Low」はその名の通り、100Hz辺りの低域を数dBブーストしてくれるスイッチ。これはアンプ側のローが少な過ぎる場合、又はベース等の低音を担当する楽器類で非常に有用なスイッチだと思います。楽器本来の自然なトーンを犠牲にする事なくほんのりと音に厚みを足してくれるスイッチで、ここまで低域のコントロールで有用性が垣間見えたものは個人的に初めてでした。

これは上記2つとも共通しているのですが、この3つのEQスイッチはどれも帯域の選択とブーストの仕方がめちゃくちゃ上手です。これだけシンプルな操作性でありながら、楽器・アンプとの組み合わせで自分が好きなトーンを出すために必要十分な機能が備わっていると感じました。

f:id:ubilliquitous:20210331163353j:image

(電源ジャック部分に印字されたWhatever(何でも)という言葉から製作者の溢れ出る自信を感じる…)

③最後に、EUNAの目玉とも言える電源部分とトゥルーバイパスループについて見てみましょう。

Whateverと記載されている通り、実はこのEUNA、電源供給において電圧は7.5V〜35Vまで、極性はセンターマイナス・プラスどちらでも問題なく駆動するように作られているのです…。。凄過ぎませんか???

つまり、この世に存在する大体どんなDC電源でもしっかり駆動するように作られているので、スタジオに置いてあるどんなアダプターでも適当に挿せばそのままちゃんと音が鳴るというとんでもないスペックの持ち主なのです。ザ・安心感。

また、ファズやワウ系のペダルがバッファと相性が悪い(所謂ローインピーダンス信号の受けが悪いという奴です)というのは既に広く知られている話だと思うのですが、EUNAはこれらのインピーダンス変化に弱いペダル達を入れる為のトゥルーバイパスループを備えています。これの何が画期的かというと、普段はバッファでクリーントーンをトリートメントして置いて、EUNA内のループに入れてあるファズをオンにすると自動的にEUNAのバッファがオフになるのです。つまり、EUNAはバッファペダルでありながらバッファそのものをオフにする事でファズ・バッファ問題を解決するという荒技を成し遂げてしまったのです笑笑。

しかもこのループはチューナーアウトとしても非常に秀逸です。実はこのループのSENDには常に信号が行っているので、ループの中に入れておけば演奏中常にチューニングが確認出来るのです。もちろんチューナー側をミュート設定にしておけばEUNAをオフにすると自動的にミュートになります。これ、実際に試すとストレスの無さに驚きます。地味ながらオススメの使い方の一つです。

f:id:ubilliquitous:20210331152809j:image

という事で、29 PedalsのEUNAでした。

総じて、新興ブランドながら海外であれだけ話題になるに足る実力を有した素晴らしいバッファ・プリアンプでした。一見奇を衒ったようなアイデア・仕様も全て、現代の音楽環境において実用上ストレスなく演奏する為に備え付けられたもので、非常に質の高いプロダクトと言えると思います。

普段実機のアンプを使っているもののクリーンやクランチでの音作りであともう一歩抜け感や安定感が欲しいという方はもちろん、出先で置いてあるアンプを使わないといけないけれど自分が好きな音を出す為にトーンシェイピングも可能なバッファが欲しいという方、宅録等でプラグイン・アンプシミュレーターへ通す前の段階で音質補正が可能なプリアンプが欲しい方、などなど、様々なシチュエーションで悩める多くの方にオススメ出来ると思います。

個人的に、コロナ禍以降ますます複雑になりつつある現代の音楽環境において自分の好きなトーンを生み出す為の一つのツールとして、EUNAは非常に有用な機材なのではないかと感じました。少なくとも、実際に弾いてみて僕の中ではこれから手放せない機材の一つになると確信しました。

また今回はエレキギターでの使用をメインにレビューしましたが、実はアコースティックギターやピアノ系楽器、ストリングス等、様々な楽器での使用も想定して製作されているようです。特に単純なバッファとして使用した際にはローが薄くなるような事も全くない為、ベース等の低音を担当する楽器の音質保持・補正バッファとしても非常に有用なのではないかと考えます(ベースの場合はLowスイッチをオンにすると尚良いかも)。是非楽器店等でお試し頂ければと思います。

f:id:ubilliquitous:20210331165638j:image

どなたかの参考になれば幸いです。それでは。