森の秘密基地

音楽に関することをだらだらと綴っています。

Barbarossa Chimaera レビュー

皆さんこんにちは、Billです。

エフェクター界の神獣、はたまた珍獣。遂に入手。

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(コントロール類は左からVolume,Tone,Gain)

BarbarossaのChimaeraでございます。

軽くBarbarossaの紹介をしておくと、福井県に居を構える国内屈指のハイエンドブランドです。超ハイエンドエフェクターで有名ではあるものの、楽器用シールドケーブルやギター弦なども販売していて、扱う製品のジャンルは多岐に渡っているようです。

そのBarbarossaのフラッグシップともいえるオーバードライブペダルであるこのChimaera。2008年の発売開始以来、既に12年以上も生産・販売され続けている中々にご長寿なペダルです。しかし、凛として時雨のTK氏の使用からChimaeraの兄弟機である「Gargoyle」が絶大な人気を獲得し、結果としてChimaeraは影に隠れたオーバードライブとなってしまいました。

(Chimaeraはキュマイラと読むそう。ちなみに名前の由来はギリシア神話に登場する怪物だとか。ちょっと厨二感)

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Chimaeraの特徴とも言える赤色のアルマイト加工が施されたゴツいアルミ削り出し筐体。エンブレムと相まって実物はめちゃくちゃカッコ良いです。Chimaeraが登場した当時はまだまだ珍しかったアルミ削り出し筐体も、LeqtiqueやSuhrが大々的に使用して以降、あまり珍しい感じではなくなりましたね。

 

ただですね、このChimaera、めっちゃ重いんですよ……手に持った瞬間に「コイツめっちゃ重いなぁ」ってなるくらい。なのでですね………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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実際に測ってみたよ!(YouTuberかよ)

大体720gくらい。数字としてみるとそこまででも無さそうに見えるけど、コンパクトエフェクター1個で720gってかなり重い方だと思う……実際ずっと手に持ってると手首疲れるし…(何の話?)

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電池ボックス部分はこんな感じ。ネジを2つを取れば開けられる簡単仕様。便利です。ただ回路部分は完全にブラックボックスになっていて、そもそも特殊ネジ回しがないと回路が収められてる蓋を開ける事さえ出来ず、話によると基板本体もガッチリモールドされているそうです(修理面倒くさそう…)。また、蓋を見て頂けると分かるかと思いますが、やはり筐体の壁面が分厚いです笑笑。そりゃ重くもなるわ…

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話が逸れました。早速レビューしていきましょう。

 

今回のレビューのポイントは2つ。

①基本はTS系だが、全てのコントロールの効きが良い

 

②Chimaeraは手元でコントロールする事が前提のOD

 

①早速出音の話なんですが、基本的にはTS系の範疇にあるODだと感じました。馴染みのあるローカット感のあるOD。ただ、ボリューム、トーン、ゲインの全てのコントロールの効きが良いです。ボリュームは上げればかなりの爆音になりますし、トーンも効きもだいぶ鋭いですし、ゲイン幅にもかなりの余裕があります。個人的には、普通にODとして使う分には全てのノブを9時方向にセッティングすればOKって感じです。

それぞれのノブを詳しく見てみましょう。

ボリュームはそれこそChimaeraをアンプ自体のブースターとして使用するのに十分なブースト量を有しています。むしろ上げ過ぎるとアンプを吹っ飛ばす可能性もあるので上げ過ぎは厳禁かも。

トーンコントロールはかなり独特で、上げると音量も一緒にブワッと上がってくるような印象です。これは弾きながらその場に合わせてボリュームと一緒に微調整すると良いです。また上げ過ぎるとハイ成分だけが残るような感じになるので、12時を基本に考えてあげると良いかと思います。12時の時点でもしっかりトレブル成分は出ていると思います。

加えて、ChimaeraはTS系にしてはかなりハイゲインまで対応します。フルまで上げれば単体でサステインのあるリードも弾けるくらいゲイン幅には余裕があります。しかし、これは②にも続くんですけど、ゲインを上げればめっちゃ良い音がするって感じでもあんまりないんですよ(決して悪い訳ではないです)。かといってギター側を弄らず、Chimaeraのゲインだけを下げても良い感じのクランチは中々作れないようになってて(笑)、楽器屋さんなんかでパッと弾いて「これが13万円……??」と思ってしまうのも不思議ではないかもしれません……。

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②しかし、これはタイトル通りなんですが、手元でコントロールすることを前提として考えると上記の特徴の辻褄が全て合うようになってます。

具体的なセッティングを交えて言うと、アンプ側の音量をある程度上げた上でペダル側のゲインとトーンは両方とも12時以下(それこそ先程書いた全て9時方向でも良いと思います)でセッティングします。そしてギター側のボリュームを7〜8くらいに下げて弾いてみると、一気にイメージが変わると思います。

 

めちゃくちゃ良いクランチが出てきます。

 

これが僕がこのペダルにハマって気付いたら大枚を叩いて買ってしまっていた理由であり、Chimaeraの一番美味しいポイントだと思っています。ピッキングのタッチに関わるキラッとした帯域は残りつつ、ローカット感が相まってアンプからの出音として余計な帯域が全く出てこない良いクランチです。

 

アルミ削り出し筐体、パーツのクライオ処理、ハンドワイヤードといった、今では半分如何わしいとさえ思われるこれらの拘りも、このトーンに対しては少なからず良い影響を与えているのではないかと思わざるを得ませんでした。

 

そこからギター側のボリュームを戻せば、リフやフレーズを弾くのにちょうど良いゲイン感のオーバードライブになります。押しても引いても良い感じのトーンが出てくれると分かると、自然と手元でゲイン感の足し引きする余裕が生まれるんですよね。メーカーが謳う「感情表現出来るOD」とはこの事なのかなぁと初めて分かりました。

その感覚を基準に、基本となるゲインをもっと上げたくなれば上げれば良いですし、トーンもしっかり効くので微調整に困る事も特にないと思います。ボリュームも然りです。

 

そう、Chimaeraのゲインが高いのはギター側のボリュームを上げ下げして弾いて丁度良くなるよう余裕を持たせる為であり、トーンの効きが良いのはアンプや鳴り感との兼ね合いで微調整が効くようにする為であり、ボリュームが爆音まで鳴らせるのもアンプと一体化して良いトーンを作る為。

そう考えると、全ての辻褄が合うのです。

 

近年流行ってるトランスペアレント系のように、オンにしてすぐ直感的に楽しいODではないかもしれません。もっと言えば、誰しもが必要とするオーバードライブという訳でもないのかもしれません。しかし、この偏執的なまでの拘り・執念に対して、僕は心からの賛辞を贈りたいと思います。

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ということで、BarbarossaのChimaeraのレビューでした。

どこまでも異端な存在でありながら、その実どこまでも王道のトーンを目指し、それを鳴らす為の必要十分な機能、使い勝手を有した稀有なオーバードライブであると言えるでしょう。

「高価なエフェクターにおいて、その価格なりの価値がそのペダルにあるのか」

それはどこまでもその人次第であり、議論が尽きる事はないでしょう。今回のレビューが、そんな深い深い魔獣の沼を潜り抜け、その人自身の答えを探す旅の一助になれば幸いです。

Chimaeraは果たして神獣なのか、珍獣なのか。

僕は尊敬の念も込めてこう呼びたいのです。

「神獣」であると。

どなたかの参考になれば幸いです。それでは。