森の秘密基地

音楽に関することをだらだらと綴っています。

Mid-fi Electronics Deluxe Pitch Pirate レビュー

皆さんこんにちは、Billです。今日もサクッと。

変わり種に見えて実はめちゃくちゃ堅実なペダルです。

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Mid-fi ElectronicsのDeluxe Pitch Pirateです。

アメリカでシンガーソングライターとしても活躍しているDoug Tuttle氏が主催・製作しているMid-fi Electronics。有名どころで言うとRandom Number GeneratorやClari(not)、Glitch Computerでしょうか。一般的に「変態系ペダル」と言われるであろうペダル達の巣窟のようなブランドとも言えるかもしれません(僕的にはめちゃくちゃ褒めてます)。

そして、そんなMid-fiから発売されている正統派モジュレーションディレイがこのDeluxe Pitch Pirateになります。

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(中身。基本的にはオーソドックなPTチップを使ったデジタルディレイがベースになっていて、ディレイ音にフォトカプラを用いたモジュレーション回路がかかる造りになっていますね。それにしても近年のMid-fiの基板はめっちゃ綺麗。初期からは考えられないほどです笑。)

それでは早速レビューに入っていきましょう。

今回のポイントは2つ。

①Mid-fiの中でも相当優等生。

②コントロールの振れ幅が大きい。

①これは実際に楽器屋さんで触った時にすぐ感じた事なのですが、このペダル、普通に優等生です。具体的に言うと、ディレイ部分に関してはPTチップを使用しているという事もありディレイ音がちゃんと前に抜けてきます。その上でディレイ音に薄ーく揺らぎを加える事で生まれるモジュレーションディレイがこれまた最高に気持ち良いです。

また、Deluxe Pitch Pirateの特徴の一つとしてBlendコントロールがキルドライも出来ます。ディレイ音にモジュレーションがかかる仕組みになっているので、ディレイのコントロール類を最小にした上でモジュレーションのコントロール類を上げていくと、何とコーラスやヴィブラートとしても使えます。

個人的にはこのモジュレーショントーンが非常に好みで、ディレイ回路を挟んでいるからなのか音の出が若干(数十msec程)遅くなる&モジュレーショントーンが原音と比べて若干ハイカットされるのですが、それ故に生まれる「程良いローファイさが加味されたヴィブラート」が最高に好きです。

それと同時に、Blendを半分程に設定すれば「爽やかで綺麗なコーラスサウンド」まで出せてしまうのがDeluxe Pitch Pirateの凄い所。元々情報が少ない事に加え、ノブ類も多い事からつい扱いづらそうなイメージを持たれてしまいがちなペダルですが、実際に触れてみたらシンプルかつこれ以上ない程多様な使い道が見出せる稀有なモジュレーションディレイペダルでした。

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②ここがある意味Mid-fiの真骨頂とも言えるかもしれませんね笑笑。Deluxe Pitch Pirateはそれぞれのコントロール幅が非常に広いので、先述した正統派な使い方とは打って変わって「変態系」までぶっ飛ぶ事が出来ます笑笑。

まずWaveというコントロールが一つの肝で、これはモジュレーションの波形をコントロールするノブです。上げれば上げるほどモジュレーションが矩形波っぽい派手な揺れ方になる印象で、コーラスやヴィブラート、モジュレーションディレイとして使う時に独特な雰囲気をプラスする使い方がオススメです。

その上で、各コントロールの幅が非常に広いので激しいディレイの発振はもちろん、モジュレーション部分も設定によってはオクターブを超えるほど強く効かせられるので発振音と組み合わせる事で「ズギューーーン」という風な、揺れというより暴走シンセという方が近いとんでもない音も生み出せます。

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という事で、Mid-fi ElectronicsのDeluxe Pitch Pirateのレビューでした。

簡単にまとめると「普段は堅実で大人しい使い方が出来て、その上でいざという時にトンデモ飛び道具にもなれるペダル欲しいなぁ」というだいぶニッチなギタリストの方がいらっしゃいましたら是非お試し頂きたいペダルです(その"いざという時"が果たして実際に来るのかどうかさえもはや気にしないギタリストの方には強くオススメしたいですね笑笑)

加えて、なんて言うんでしょうか。明らかに個人の方が製作したと思われるインディーなPCゲームやホラーゲームにも通ずる、ポップな仄暗さと独特のワクワク感があります(伝われ)。そう考えるとこのテレビノイズの様な塗装もそれっぽく見えてきます。

何はともあれ、独自の世界観がしっかりとあるエフェクターだなと率直に感じました。

何かと奇抜なアイデアサウンドデザインというイメージが先行するMid-fi Electronicsですが、実際に触れて知れば知るほど「使いやすさと変態性の両立」が非常に上手いブランドだと分かってきます。「一度ハマると何故か集めたくなってしまう」という前評判は正にその通りだなぁと思いました。

どなたかの参考になれば幸いです。それでは。

Phantom Fx Mother レビュー

皆さんこんにちは、Billです。今回はサクッと。

これ本当に良いよ…。。。ビビりました。。

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(コントロール類は左からVolume,Shape,Saturation)

Phantom FxのMotherです。

エフェクターマニアの間ではもはやお馴染みになりつつある「買いたくても全然買えないペダル達」の筆頭であるこのMother。詳しい内情までは知らないですがどうやら抽選販売時にも転売業者の介入もあったらしく、ウェイティングリストを使った受注生産方式になって漸く買えました。機材の転売は本当に社会悪(素振り)。

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(中身パカァ。今回のMotherからPhantom Fxのペダルの製作は江川さんという方が担当されています。その証拠に裏蓋のサインもお二人の連名になっています。江川さんはSara Pedalsというご自身のエフェクターブランドも運営されているのですが、今回のMotherはとにかく造りが凄いです…(ちなみにSara Pedalsさんのペダルも同様に凄いクオリティです)。他社製エフェクターでは見た事がない配線方法と基板類の固定方法を採用していて、ビルドクオリティに関していえば旧Phantom Fxから大幅に進化していると言って良いでしょう。パーツに関しても戸高さん・江川さん両人が選定したビンテージパーツと現行高性能パーツをバランス良く採用している為、全方位的に隙のない造りとなっています。)

実は個人的に、ファズペダルのレビューってあんまり乗り気がしないんですよね笑笑。というのも、ファズって「何も考えずに鳴らしてカッコ良いかどうかが全て」みたいな所があると思ってて、わざわざ長ったらしく文章に認めるものでもない気がするんですね(爆)。まあそんな感じなので、今回のレビューはざっくりとした個人的な感想程度に思って頂ければ幸いです。

届いたその日にワクワクしながら弾いた時の感想は「あぁーこれだよこれ…こういうので良いんだよ…(語彙力皆無)」と「マフ系ファズって手元のボリューム絞ったらこんなに良い感じのオーバードライブになるポテンシャルを秘めていたのか…」でした。

 

まずそもそもの話ですが、Motherはマフ系ファズです。なので基本的にはゲインマシマシ&爆音で鳴らすのが一番カッコ良いタイプのファズだと思いました。あと当然ながら、手元を絞った際にファズフェイスの様な鈴鳴り的なクリーン〜クランチが出る訳ではありません(鈴鳴りクリーンが出したい場合は素直にファズフェイス系を買うのが吉だと思います)。

ですが、ここが個人的に一番驚いた点なのですが、Motherはマフ系ファズなのにあんまりドンシャリじゃない、というよりミドル成分がそこそこ前に出て来てくれる印象です。しかも手元を絞るとオーバードライブ程度までゲインが下がってくれます。つまり、ゲインを上げても耳障りなトーンに全くならない上、手元を上げ下げしてもしっかりと音の芯の部分が鳴ってくれる様な音のチューニングになっているのです。

なので、手元を絞れば程良く抜けるローファイなオーバードライブ、少しあげればロックなオーバードライブ〜ディストーション、手元全開でサステインが豊かで中域も滑らかなリードトーン、という多彩なトーンをペダル一つで引き出す事が出来たのです。個人的な話ではありますが、僕が長年思い描いていた「理想のマフ系ファズの音」がそこにありました。弾いた瞬間に虜になってしまう音でした。

強いて言えば、マフ本来の「面で鳴るバキバキ轟音ファズ」的な雰囲気は薄いので生粋のビッグマフファンの方はあまり惹かれないかもしれませんが、「マフ好きなんだけどアンサンブルで抜ける様にもうちょいミドル出て欲しいなぁ」とか「手元を絞っても良い感じになったらなぁ」と思っている方にとって、Motherはこれ以上ない選択肢になるかもしれないなと率直に感じました。

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という事で、Phantom FxのMotherのレビューでした。

今現在でも入手するのが非常に難しい(今からリストに入ると一年位待つ事になるらしいです…)ペダルという事もあり大手を振って人にオススメ出来る感じではないのですが、僕が今まで試したマフ系ファズの中ではNo.1でした。特に難しい事を考えなくても「使えるカッコ良い音」が出てきてくれますし、手元を絞って音作りをする事も出来る幅広さも有しています。しかも造りの良さからモノとしての信頼性も高く、まさに質実剛健と言った所でしょうか。

普通にそこそこ高いですし手元に来るまで一年以上待つ可能性もあるものの、それだけの価値が十分にあるペダルだと感じました(絶対CULTさんから正規で買うんだぞ…転売屋なんかから買っちゃダメだ…お兄ちゃんとの約束な…)

どなたかの参考になれば幸いです。それでは。

Strymon Flint レビュー

皆さんこんにちは、Billです。今日はサクッと。

もうね、トレモロとリバーブで迷ったら是非是非これを試してみて欲しいです…。ほぼ全ての悩みが解決すると思います…。

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StrymonのFlintです。

言わずもがなの定番機種になりつつあるこのFlint。「定番機種であればある程ついつい手を出しづらくなる」という超絶面倒臭いオタク気質故に今まで試してなかったのです…。。ところが先月偶々時間があったのでふと試したら、もう一音聴いただけで「あ、これは買いだわ…」となったペダルです。

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(中身。DSPおっきぃ…(恍惚)。非常に現代的でカッコ良い中身ですね(僕こういうの大好き)。ストライモンのペダルなので当然デジタルエフェクターな訳ですが、これは後述しますがマジでデジタル感とかゼロです…。クッソ良い音ですよ。)

という事で早速レビューしていきましょう。

今回のポイントは2つ。

①アンプのリバーブトレモロを好んで使ってる人にも十分以上にオススメ出来るクオリティ

②リバーブトレモロ共に各モードが非常に秀逸

 

①まずはそもそも音のクオリティはどうなんだって話だと思うのですが、これは個人的には文句なしの出来です(まあStrymonの場合よっぽどの事がない限り変なペダルとか出ないと思いますが)。

去年、僕はFenderのシルバーパネルのDeluxe Reverbを買いました(アンプのレビューはこちら↓    https://ubilliquitous.hatenablog.com/entry/2020/07/05/104642 )。それからというもの、デラリバ本体に内蔵されているスプリングリバーブトレモロをずっと使用してたのですが、唯一気になっていた点がありました。それは、ノイズです。

真空管アンプという特性上仕方ない部分なのか、はたまた僕のアンプが偶々ノイジーな個体なのかは定かではありませんが、リバーブを上げた際にブワッとノイズが増えたり、トレモロが常にクリックノイズが鳴っていたりと、中々に気になるノイズが鳴るようなっていました…。。個人的にリバーブは常にあっさりかけておきたい派ですし、トレモロもシンプルで地味だからこそ使い易く、使用頻度が高いエフェクトです。

なので、やはりここに関してはノイズが少ないに越したことはないと思い、「それならリバーブトレモロはペダルでかけることにしよう」と思った訳です。ある意味自然な流れなんだと思いますが、そうなった時に途端に僕の中でFlintにフォーカスが当たりました。

で、実際に購入した後にデラリバのリバーブトレモロとFlintのスプリングリバーブ・チューブトレモロを比較した所、Flintの「ノイズレス具合」と「アンプ内蔵のエフェクトに引けを取らないその心地良さ」に驚いてしまいました…。。「ああ、これなら僕はFlintで行こう」と決心した瞬間でした。

もし、普段アンプのリバーブトレモロを使っているけどノイズに悩んでるんだよなぁという方がいましたら、是非一度Flintを試してみて下さい。オススメです。

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(デラリバと一緒にパシャリ)

②最後にFlintの各モードを見ていきましょう。

バーブはSpring、Plate、Hallの3つ、トレモロはHarmonic、Tube、Photoの3つがあります。又、隠しモードとしてリバーブトレモロの接続順を変更したり、エフェクトの音量を調節出来たりと、デジタルだからこそ出来る幅広い設定が可能です。で、個人的にそれぞれの3つのモードが本当にツボを突いていると感じました。

バーブで言うと、Springはアンプのリバーブをそのまま互換できるレベルのスプリングリバーブ。Plateはスプリング程派手ではなく、ホール程広がり過ぎないリバーブが欲しい時にうってつけのプレートリバーブ。Hallは更に広がりあるリバーブや、ロングディケイのアンビエントバーブが欲しい場合に最高なホールリバーブです。

トレモロも、Harmonicは音量の上下に絶妙なモジュレーションも加わった独特の心地良さが魅力的。Tubeはデラリバのトレモロに程近い、使い易くオーソドックスなトレモロ。Photoはよりクッキリとした効き方が特徴で、速さ・深さを両方最大まで上げた際の飛び道具的なマシンガンサウンドも非常に楽しいトレモロです。

両エフェクトのどのモードも確実に使い道があるグッドなサウンドで、器用貧乏にならないこのバランスの良さ・総合的な完成度は素晴らしいものだと思いました。

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という事で、StrymonのFlintのレビューでした。

元々のエフェクト音も良く、その上でここまで遊べるペダルって中々ないです。本当に弾いてて楽しいですよ。僕的には、まさに文句なしのペダルです。

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ちなみに、実はFlintと一緒にDecoというペダルも試し弾きしたのですが、これもハンパなく良かったです…。。その昔、テープレコード全盛期の時にダブルトラッキングを用いる事で生まれたコーラス・フランジャー・ディレイエフェクトやテープサチュレーションを再現したペダルで、ニッチなコンセプトながら完成度がバリ高かったです…(いずれ買うかも笑笑)。電源も去年からずっとZumaを愛用してますし、これからStrymonさんには長い間お世話になりそうな予感がしてます笑笑。

それはそうと、サクッとやると言っておきながら2000字を軽く超えるエフェクターレビューというのは一体どうなんだろうね笑笑??

どなたかの参考になれば幸いです。それでは。

29 Pedals EUNA レビュー

皆さんこんにちは、Billです。

おいこれマジで良いぞ…。。。。

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(コントロール類は左からHarmonics,Brightness,Low)

29 PedalsのEUNAです。

アメリカはロサンゼルスに居を構える新興エフェクターブランドである29 Pedals。その29 Pedalsの現在のフラグシップとも言える新世代のバッファ・プリアンプペダル、それこそがこのEUNA(Elite UNity Amplifier)です。

元々はInstagramを中心に2020年の発売当初から注目され始め、その後YouTube上にもちらほらとデモビデオが上がってきたこともあり海外では既に結構な話題になっていたこのEUNA。僕自身去年辺りからずっと気になっていたペダルではあったものの、「まあそもそも今大人気なペダルで在庫全然ないし、特に今コロナ禍だから個人で輸入するのもなんかあれだなぁ…。」といった感じでずっと逡巡していました笑。

ところが2021年の3月末、アンブレラカンパニーさんが日本国内の輸入代理店となった事で晴れてEUNAが日本でも正規ルートで購入出来るようになり、速攻で購入したという訳でございます。

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(中身パカァ。見ると分かると思いますが、実は基板面に色々な文面が印刷されています。どうやらこれらがEUNAをモディファイする際のTIPSになっているとのこと(改造すると保証対象外になってしまうのでくれぐれもご注意を)。また、これは実際に基板をよく見ると分かるのですが信号部分を通る泊銅がとても厚いです…。これは良い音しそうな予感満点です…。)

 

という事で、早速レビューに入りましょう。

今回のポイントは3つ

①まずバッファとしての基本性能が凄い

②EQスイッチが非常に秀逸

③電源も含めたトータルのビルドクオリティが高い

 

①まずここが一番気になる所だと思うのですが、個人的に、今まで試してきたペダルの中でもダントツで出音のバランスの良いバッファペダルです。

まずこのEUNA、従来のバッファペダルからは考えられない程に再生レンジが広大な上にヘッドルームにも非常に余裕があります。そのためバッファでたまにある、低域がすっこ抜ける、カッティング等でアタック・トランジェントが頭打ちになる、複雑な和音を鳴らした際に音が濁る、といった事が全く無いのです。

これ本当どうやってるんですかね…笑笑???特に和音でカッティングした際のジュワッとした質感や分離感がそのまま前に出てくれるのは個人的にめちゃくちゃ嬉しかったです…。。しかも低域も余裕を持って鳴ってくれるので弾いていて安心感があります。

この感じ、所謂ペダル型エフェクターのバッファというよりレコーディングスタジオで用いる録音用マイクプリアンプのそれに近いものを感じました。まさに、バッファとしてハイレベルな基本性能を有しているからこそ達成出来るトーンだと感じました。

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(空間系でダントツのお気に入りのFlintと。この2台にあと一個足してお出かけ用ボード組んでも良いかも…??)

②バッファとして抜群の性能を有しているEUNA。唯一のコントロール類とも言える3つのEQスイッチもまた非常に秀逸です。

一番左の「Harmonics」は主に空気感に関わる超高域を棚型で数dBブーストするシェルブEQスイッチ。このスイッチに関しては、良く調整されてプレゼンス成分が自然と良く出てくれる真空管アンプを鳴らす際にはオンにする必要はないかもしれません。ですが、宅録等でアンプシミュレーターを用いる場合や、スタジオ等でへたったアンプを鳴らす場合に絶大な威力を発揮します。DAW側やアンプ側で足すよりも的確に欲しい帯域を前に出してくれます。これは是非試して欲しいと思います。

真ん中の「Brightness」は具体的な音抜けに関わるハイミッドをブーストするEQスイッチ。このスイッチが非常に秀逸で、アンプのトレブルやギター側のトーンよりもピンポイントな帯域をブーストしてくれます。その為、例えば普段は高域が出過ぎないように調節しているけれど曲や環境によって少しハイ抜けが欲しい、という時にこのスイッチをオンにするだけで音を前に押し出してくれます。

一番右の「Low」はその名の通り、100Hz辺りの低域を数dBブーストしてくれるスイッチ。これはアンプ側のローが少な過ぎる場合、又はベース等の低音を担当する楽器類で非常に有用なスイッチだと思います。楽器本来の自然なトーンを犠牲にする事なくほんのりと音に厚みを足してくれるスイッチで、ここまで低域のコントロールで有用性が垣間見えたものは個人的に初めてでした。

これは上記2つとも共通しているのですが、この3つのEQスイッチはどれも帯域の選択とブーストの仕方がめちゃくちゃ上手です。これだけシンプルな操作性でありながら、楽器・アンプとの組み合わせで自分が好きなトーンを出すために必要十分な機能が備わっていると感じました。

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(電源ジャック部分に印字されたWhatever(何でも)という言葉から製作者の溢れ出る自信を感じる…)

③最後に、EUNAの目玉とも言える電源部分とトゥルーバイパスループについて見てみましょう。

Whateverと記載されている通り、実はこのEUNA、電源供給において電圧は7.5V〜35Vまで、極性はセンターマイナス・プラスどちらでも問題なく駆動するように作られているのです…。。凄過ぎませんか???

つまり、この世に存在する大体どんなDC電源でもしっかり駆動するように作られているので、スタジオに置いてあるどんなアダプターでも適当に挿せばそのままちゃんと音が鳴るというとんでもないスペックの持ち主なのです。ザ・安心感。

また、ファズやワウ系のペダルがバッファと相性が悪い(所謂ローインピーダンス信号の受けが悪いという奴です)というのは既に広く知られている話だと思うのですが、EUNAはこれらのインピーダンス変化に弱いペダル達を入れる為のトゥルーバイパスループを備えています。これの何が画期的かというと、普段はバッファでクリーントーンをトリートメントして置いて、EUNA内のループに入れてあるファズをオンにすると自動的にEUNAのバッファがオフになるのです。つまり、EUNAはバッファペダルでありながらバッファそのものをオフにする事でファズ・バッファ問題を解決するという荒技を成し遂げてしまったのです笑笑。

しかもこのループはチューナーアウトとしても非常に秀逸です。実はこのループのSENDには常に信号が行っているので、ループの中に入れておけば演奏中常にチューニングが確認出来るのです。もちろんチューナー側をミュート設定にしておけばEUNAをオフにすると自動的にミュートになります。これ、実際に試すとストレスの無さに驚きます。地味ながらオススメの使い方の一つです。

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という事で、29 PedalsのEUNAでした。

総じて、新興ブランドながら海外であれだけ話題になるに足る実力を有した素晴らしいバッファ・プリアンプでした。一見奇を衒ったようなアイデア・仕様も全て、現代の音楽環境において実用上ストレスなく演奏する為に備え付けられたもので、非常に質の高いプロダクトと言えると思います。

普段実機のアンプを使っているもののクリーンやクランチでの音作りであともう一歩抜け感や安定感が欲しいという方はもちろん、出先で置いてあるアンプを使わないといけないけれど自分が好きな音を出す為にトーンシェイピングも可能なバッファが欲しいという方、宅録等でプラグイン・アンプシミュレーターへ通す前の段階で音質補正が可能なプリアンプが欲しい方、などなど、様々なシチュエーションで悩める多くの方にオススメ出来ると思います。

個人的に、コロナ禍以降ますます複雑になりつつある現代の音楽環境において自分の好きなトーンを生み出す為の一つのツールとして、EUNAは非常に有用な機材なのではないかと感じました。少なくとも、実際に弾いてみて僕の中ではこれから手放せない機材の一つになると確信しました。

また今回はエレキギターでの使用をメインにレビューしましたが、実はアコースティックギターやピアノ系楽器、ストリングス等、様々な楽器での使用も想定して製作されているようです。特に単純なバッファとして使用した際にはローが薄くなるような事も全くない為、ベース等の低音を担当する楽器の音質保持・補正バッファとしても非常に有用なのではないかと考えます(ベースの場合はLowスイッチをオンにすると尚良いかも)。是非楽器店等でお試し頂ければと思います。

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どなたかの参考になれば幸いです。それでは。

Phantom Fx×Shun Nokina Bells レビュー

お久しぶりです、Billです。

2021年最初のレビューはこれだっ……!!

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(ノブ類は左からVolume,Bell,1776)

Phantom FxとShun Nokina氏によるコラボレーションペダル「Bells」です。

実はこのペダルを手に入れたのは去年のクリスマス頃なのですが色々とずれ込み気付いたら春になってました(爆)

ドがつくほどのユルユル更新の我がブログですが、これからもゆっくりやっていくので何卒よろしくお願いします…。。。

という事で、Bellsですよ…。。本当にシュンノキナさんが大好き&戸高さんも大好きな僕からしたらある意味ずっと夢見ていたODペダルの一つです。今回も縁あって入手する事が出来ました。ありがたや。

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(中身。実は僕が今回手に入れたBellsは少し特殊な個体。話によると、公式の生産終了後に人伝にオーダーを受け付けて作られたワンオフ品とのこと。スイッチや配線等のパーツレイアウトやカラーリングがレギュラー品と違うのはそのためなんだとか。なんならパーツにも少しレギュラー品とは違いがあったり、筐体が何故が初期に用いられた角ばったものだったりするそうですが、基本同じ回路なので音はレギュラー品とほぼ同じだと思います。)

という事で、早速レビューしていきましょう。

今回のレビューのポイントは2つ。

①Bellsは独特かつ上質なローゲインドライバー

 

②ギターのボリュームや強弱への高い反応性

 

①率直に言って、所有する前に僕の頭の中にあった想像を遥かに超えた素晴らしいオーバードライブペダルでした…。。その音を端的に言い表すなら、Bellsという名の通り、TS系のように高域成分が削がれる事なく前へ抜けてくれる非常に弾きやすいローゲインオーバードライブです。

製作者のお二人へのインタビューをご覧頂ければ分かるのですが、BellsはBJFEのHoney Bee ODをベースにシュンさんが回路をフルカスタムし、戸高さんがパーツと音色の追い込みを行う様な形で開発されたオーバードライブ。個人的に、BellsはHoney Beeを元にしながらも音のチューニングとしては比較的弾きやすい方向へシフトさせているんじゃないかと感じました。というのも、Honey Beeが本来持っている粘り感や自然なレンジ感はそのままに、ウーフィーとも言えるような低域のボワッとした質感が解消され、その上で高域の膜が一枚取れてくれたようなスッキリ感が感じられるのです。

これは回路設計を担当したシュンさんの技量による部分が非常に大きいんだろうと思いますが、Honey Beeの持ち味とも言える部分は残しつつも上手くアンサンブルで抜けてくる音作りにしているんだろうと思いました。

具体的に言うと、トーンコントロールに当たるBellコントロールを最小〜最大まで、どこに設定しても高域が濁る・ボヤける事が全然なく、先述の通り程良いローカット感も感じられ、全体としてギターの美味しい中域のベルトーンが前に出てきてくれます。

以前お二人がBellsを「Real Sweet Honey Overdrive」と表現していた事にも納得がいくほど、非常にバランスの取れた出音だと率直に感じました。

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②これも既に各所で絶賛されている部分だと思うのですが、やはりギター側、弾き手側への反応性は特筆すべきものがあると感じました。何より素晴らしいのが、ギターボリュームを絞った際のクリーン〜クランチがまあ絶品だという事です。。。腰砕けになったり変に高域が消えてしまう事がなく、本当にスッキリとゲインが下がってくれるので積極的に手元を操作しながら音作りがしたくなります。これだけで僕は「あ、これ買って本当良かった…」と思ってしまいました…。。

また、Bellsはゲインフルでもピッキングの強弱だけでクリーンまで持っていける程のレスポンスの良さを誇ります。このタッチレスポンスの高さはHoney Bee ODでも同様に見受けられる特徴な訳ですが、Bellsの方が高域成分が前へ抜けてくるからなのか、よりタッチに対して敏感に反応してくれる印象があります。

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という事で、Phantom Fx×Shun NokinaのBellsのレビューでした。

率直に言って、伝説の名に違わぬ素晴らしいオーバードライブでした。僕自身、軽いクランチ〜OD辺りのトーンが大好きで色々とオーバードライブを試してきましたが、その中でも指折りの音の良さ・扱い易さを有したオーバードライブです。

2013年の生産終了から既に7年以上経過していますが未だに復刻が行われる事はなく、元々希少である事に加え、Mother復刻とともにPhantom Fx人気が再び急上昇している近年では、Bellsは「マニア好みのOD」として扱われてしまう事も少なくありません。しかし、個人的には何より実用において光るオーバードライブペダルだと感じました。というのも、ここまでアンサンブルにおいて良い位置に音が来てくれるタッチレスポンスの優れたODは本当に珍しいのです。

TSやBD-2といった数々の名機とは一味違う質感・音抜けを有しつつ、それらの名機同様に安心感のあるコントローラブルなオーバードライブペダル、それがBellsなのです。

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夏草や 兵どもが 夢の跡

どなたかの参考になれば幸いです。それでは。

BOSS DM-2W レビュー

皆さんこんにちは、Billです。今回はサクッと。

やっぱBOSSはスゲーっす。

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BOSSのDM-2Wでございます。

アナログディレイの世界的名機であるDM-2。それが完全アナログ回路のまま、技クラフトシリーズの一員として現代に蘇ったのが今回のDM-2Wでございます。

元々DM-2ってアナログディレイの中でもかなり扱いやすいんですよ。アナログ故の暖かみ・良いローファイ感にほのかなクリアさが良い塩梅に加わってる感じ。その為アンサンブルに馴染みながらも主張する事も出来、その上シンプルで使いやすい。文句なしですよね。

 

で、このDM-2Wの何が凄いって、そのオリジナルの良さをちゃんとそのまま残しつつ新たに加えられたモードスイッチがまあ使いやすいこと。。

 

このスイッチ、実は音の質感とタイム感の両方がガラッと変わります。具体的に言うと、全てのノブを12時方向にセットした時、Standardモードではスラップバックディレイに最適なショートディレイ、Customモードでは付点8分ディレイに最適なミディアムタイムのディレイになります。加えて、CustomモードはStandardモードと比べて明らかにS/Nが良く、長めのディレイタイムに設定してもアナログディレイとは思えない程ノイズが少ないです。

つまり、StandardはスラップバックディレイやReverb風にあっさりかけるタイプのディレイとして、Customは付点8分のリズミカルなディレイ、又はギターソロに有用なロングディレイとして、といった風に、それぞれ得意とするジャンルが明確に差別化されてるんです。そして、ノブ類の設定が同じでもモードスイッチを選ぶだけでここまで音に差が出るので、このスイッチを実質的なプリセットスイッチ的に使えるんですよね。

これがですね、実際に使ってみると分かりますけどめちゃくちゃ直感的で便利なんですよ。特に曲によってディレイの感じを変えたいっていう時に、ワンタッチで切り替えるだけで良いっていうこの仕様は、まさに実践的かつユーザーフレンドリーなものだと思いました。

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ということで、BOSSのDM-2Wでした。

単純に音の広がりを加えるディレイならこれ一台で十分と言えるくらい、めちゃくちゃ使いやすく、かつ実用的なアナログディレイになってると思います。正直僕はオリジナルDM-2よりも好きかもしれません…。。

ちなみにこれはめちゃくちゃニッチな使い方になると思うんですけど、是非ですね、Standardモードでディレイタイムを最大、フィードバックを発振する手前まで上げてコード弾きしてみて欲しいんです。

ローファイで蕩けるような、最高に心地よいディレイサウンドが出てきます。これぞアナログディレイならではのトーン。是非一度体験してみて欲しいです。

 

そういえば、そろそろ新しい技クラフトのペダルが出るらしいですね。てか技クラフトのペダルって、どれもめちゃくちゃハイクオリティかつ実用的で本当素晴らしいと思います。流石世界のボスです。

本当、BOSSのペダルに触れる度に思う。BOSSのお膝元である日本に生まれてよかったと……。

どなたかの参考になれば幸いです。それでは。

Barbarossa Chimaera レビュー

皆さんこんにちは、Billです。

エフェクター界の神獣、はたまた珍獣。遂に入手。

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(コントロール類は左からVolume,Tone,Gain)

BarbarossaのChimaeraでございます。

軽くBarbarossaの紹介をしておくと、福井県に居を構える国内屈指のハイエンドブランドです。超ハイエンドエフェクターで有名ではあるものの、楽器用シールドケーブルやギター弦なども販売していて、扱う製品のジャンルは多岐に渡っているようです。

そのBarbarossaのフラッグシップともいえるオーバードライブペダルであるこのChimaera。2008年の発売開始以来、既に12年以上も生産・販売され続けている中々にご長寿なペダルです。しかし、凛として時雨のTK氏の使用からChimaeraの兄弟機である「Gargoyle」が絶大な人気を獲得し、結果としてChimaeraは影に隠れたオーバードライブとなってしまいました。

(Chimaeraはキュマイラと読むそう。ちなみに名前の由来はギリシア神話に登場する怪物だとか。ちょっと厨二感)

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Chimaeraの特徴とも言える赤色のアルマイト加工が施されたゴツいアルミ削り出し筐体。エンブレムと相まって実物はめちゃくちゃカッコ良いです。Chimaeraが登場した当時はまだまだ珍しかったアルミ削り出し筐体も、LeqtiqueやSuhrが大々的に使用して以降、あまり珍しい感じではなくなりましたね。

 

ただですね、このChimaera、めっちゃ重いんですよ……手に持った瞬間に「コイツめっちゃ重いなぁ」ってなるくらい。なのでですね………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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実際に測ってみたよ!(YouTuberかよ)

大体720gくらい。数字としてみるとそこまででも無さそうに見えるけど、コンパクトエフェクター1個で720gってかなり重い方だと思う……実際ずっと手に持ってると手首疲れるし…(何の話?)

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電池ボックス部分はこんな感じ。ネジを2つを取れば開けられる簡単仕様。便利です。ただ回路部分は完全にブラックボックスになっていて、そもそも特殊ネジ回しがないと回路が収められてる蓋を開ける事さえ出来ず、話によると基板本体もガッチリモールドされているそうです(修理面倒くさそう…)。また、蓋を見て頂けると分かるかと思いますが、やはり筐体の壁面が分厚いです笑笑。そりゃ重くもなるわ…

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話が逸れました。早速レビューしていきましょう。

 

今回のレビューのポイントは2つ。

①基本はTS系だが、全てのコントロールの効きが良い

 

②Chimaeraは手元でコントロールする事が前提のOD

 

①早速出音の話なんですが、基本的にはTS系の範疇にあるODだと感じました。馴染みのあるローカット感のあるOD。ただ、ボリューム、トーン、ゲインの全てのコントロールの効きが良いです。ボリュームは上げればかなりの爆音になりますし、トーンも効きもだいぶ鋭いですし、ゲイン幅にもかなりの余裕があります。個人的には、普通にODとして使う分には全てのノブを9時方向にセッティングすればOKって感じです。

それぞれのノブを詳しく見てみましょう。

ボリュームはそれこそChimaeraをアンプ自体のブースターとして使用するのに十分なブースト量を有しています。むしろ上げ過ぎるとアンプを吹っ飛ばす可能性もあるので上げ過ぎは厳禁かも。

トーンコントロールはかなり独特で、上げると音量も一緒にブワッと上がってくるような印象です。これは弾きながらその場に合わせてボリュームと一緒に微調整すると良いです。また上げ過ぎるとハイ成分だけが残るような感じになるので、12時を基本に考えてあげると良いかと思います。12時の時点でもしっかりトレブル成分は出ていると思います。

加えて、ChimaeraはTS系にしてはかなりハイゲインまで対応します。フルまで上げれば単体でサステインのあるリードも弾けるくらいゲイン幅には余裕があります。しかし、これは②にも続くんですけど、ゲインを上げればめっちゃ良い音がするって感じでもあんまりないんですよ(決して悪い訳ではないです)。かといってギター側を弄らず、Chimaeraのゲインだけを下げても良い感じのクランチは中々作れないようになってて(笑)、楽器屋さんなんかでパッと弾いて「これが13万円……??」と思ってしまうのも不思議ではないかもしれません……。

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②しかし、これはタイトル通りなんですが、手元でコントロールすることを前提として考えると上記の特徴の辻褄が全て合うようになってます。

具体的なセッティングを交えて言うと、アンプ側の音量をある程度上げた上でペダル側のゲインとトーンは両方とも12時以下(それこそ先程書いた全て9時方向でも良いと思います)でセッティングします。そしてギター側のボリュームを7〜8くらいに下げて弾いてみると、一気にイメージが変わると思います。

 

めちゃくちゃ良いクランチが出てきます。

 

これが僕がこのペダルにハマって気付いたら大枚を叩いて買ってしまっていた理由であり、Chimaeraの一番美味しいポイントだと思っています。ピッキングのタッチに関わるキラッとした帯域は残りつつ、ローカット感が相まってアンプからの出音として余計な帯域が全く出てこない良いクランチです。

 

アルミ削り出し筐体、パーツのクライオ処理、ハンドワイヤードといった、今では半分如何わしいとさえ思われるこれらの拘りも、このトーンに対しては少なからず良い影響を与えているのではないかと思わざるを得ませんでした。

 

そこからギター側のボリュームを戻せば、リフやフレーズを弾くのにちょうど良いゲイン感のオーバードライブになります。押しても引いても良い感じのトーンが出てくれると分かると、自然と手元でゲイン感の足し引きする余裕が生まれるんですよね。メーカーが謳う「感情表現出来るOD」とはこの事なのかなぁと初めて分かりました。

その感覚を基準に、基本となるゲインをもっと上げたくなれば上げれば良いですし、トーンもしっかり効くので微調整に困る事も特にないと思います。ボリュームも然りです。

 

そう、Chimaeraのゲインが高いのはギター側のボリュームを上げ下げして弾いて丁度良くなるよう余裕を持たせる為であり、トーンの効きが良いのはアンプや鳴り感との兼ね合いで微調整が効くようにする為であり、ボリュームが爆音まで鳴らせるのもアンプと一体化して良いトーンを作る為。

そう考えると、全ての辻褄が合うのです。

 

近年流行ってるトランスペアレント系のように、オンにしてすぐ直感的に楽しいODではないかもしれません。もっと言えば、誰しもが必要とするオーバードライブという訳でもないのかもしれません。しかし、この偏執的なまでの拘り・執念に対して、僕は心からの賛辞を贈りたいと思います。

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ということで、BarbarossaのChimaeraのレビューでした。

どこまでも異端な存在でありながら、その実どこまでも王道のトーンを目指し、それを鳴らす為の必要十分な機能、使い勝手を有した稀有なオーバードライブであると言えるでしょう。

「高価なエフェクターにおいて、その価格なりの価値がそのペダルにあるのか」

それはどこまでもその人次第であり、議論が尽きる事はないでしょう。今回のレビューが、そんな深い深い魔獣の沼を潜り抜け、その人自身の答えを探す旅の一助になれば幸いです。

Chimaeraは果たして神獣なのか、珍獣なのか。

僕は尊敬の念も込めてこう呼びたいのです。

「神獣」であると。

どなたかの参考になれば幸いです。それでは。